1890年頃、イギリス海軍の軍医であったギムレット卿が、艦内で将校に配給されていたジンを飲みすぎて仕事にならない光景を憂慮し、そのままジンを飲むのではなく健康面も考慮するためにライムジュースを混ぜて飲むことを提唱したことがきっかけで生まれたカクテルである。

ちなみにa gimletを訳すと錐(工具などで使うきりのこと)という意味合いから、その味を突き刺すような鋭いイメージから命名された説もあります。

また言葉遊びで、「錐」という漢字を「霧」と思った日本人がグラスに注ぐと霧が出てきたような雰囲気になると推奨したバーテンダーもいるそうです。

言葉遊びが好きな方にはもってこいのネタですね。

ギムレットの良さ

ギムレットといえば、皆さん何を連想しますか?

僕はカクテルを飲んだことのないときに、こんなハードボイルド小説を熟読していました。

その小説にでてくる有名なセリフがあります。

「I suppose it’s a bit too early for a gimlet he said」

「ギムレットには早すぎる」

レイモンド・チャンドラー「長いお別れ」(The Long Goodbye1953)

この小説はチャンドラーが創造した私立探偵フィリップ・マーロウが主役の1本で長編ハードボイルド小説です。

2007年には村上春樹氏の訳で「ロング・グッドバイ」としても刊行されているので、一度は聞いたことがあるとおもいます。

そのほかにも実は、日本映画「マジックアワー」でも登場しています。
ハードボイルド小説や村上春樹の訳での刊行、三谷幸喜氏の映画と。

さりげなく読んでる観てる方も多いかと思いますが、
そんな話が好きな女性と語り合いながら、ギムレットを楽しむのもいい夜かもしれませんね。

「ギムレットには早すぎる」

この言葉は何を意味するのか?そんな思いを語らいあう夜も僕も素敵だとおもいます。
今の自分に置き換えて創造することも。

原作の意味も知ってはおりますが、そこはぜひ自分の目で創造でみてみてください。

話はもとに戻りますが、ギムレットはジンを使ったショートカクテルなので、アルコール度数は約35%前後ですので、何杯も飲めば足腰にきますのでご注意を!

ギムレットの味わい(フレバー)

今と昔ではレシピが異なるところがあります。
もちろん、昔ながらレシピで作っているバーテンダーさんも多いと思いますが。

今回は現在より多く飲まれているスタイルと昔のスタイルの違いを
ご説明させていただきます。

小説のネタバレになるかもしれませんが、
昔はジンとローズ社製ライムジュースを半分ずつ、他に何もいれないレシピで作っていました。

当時使用されていたライムジュースは、コーディアル・ライム(ライムジュースの果汁50%以上に砂糖を加えて作っているシロップのこと)を使用していました。

なので、ジンと半々で作っても甘酸っぱい感じが強く、アルコール度数も24%前後と今のスタイルよりは飲みやすかったのかなとおもいます。

今はといいますと、
ジンを3/4フレッシュ・ライムを1/4とガムシロップ5ml
といったレシピがスタンダートなので、昔のレシピと比べると甘さは控えめ、かつ、ジンの量が多いので、よりキリッとした仕上がりなうえに強いカクテルの一つです。

ジンの味が好きな方やハードボイルドな気分に浸り時にはぜひお試しください。

一度お店でも、頼んでみてもう少し飲みやすくしてほしいや、甘さが欲しい場合は、ぜひその旨もバーテンダーさんに伝えればあなた好みの味にアレンジしてくれますよ。

ギムレットの美味しい作り方

用意するもの

材料

  • ドライジン(タンカレージン) 3/4
  • ライム1/4
  • ガムシロップ(カリブ社)2tsp

手順

  1. シェーカーにドライジン、ライム(優しく絞る)、
    ガムシロップを入れる。
  2. バースプーンで一度ステアして一度、テイストを確認してから
    シェーカーに氷を入れる。
  3. ハードシェイクを20回ほどして、冷えたカクテルグラスに注ぐ。

*シェーカーに氷を入れる前の段階で、テイストを確認して酸っぱすぎる場合は、ガムシロップを少しづつ足しながら調整してください。

少し甘いと感じた場合は、ちょっとしたテクニックなんですが、絞ったライムをシェーカーの中に入れてから氷を入れてハードシェイクしてください。

絞りきれていない果汁や皮からでる成分が程よく液体に馴染んで爽やかさを感じるギムレットに大変身いたします。

実は私がお店で提供しているときはこの作り方でお出ししております。

シェイクした液体を透明なカクテルグラスに注ぐときに霧ができている状態だとハードシェイクがしっかりできている証拠ですので、ぜひシェーカーの使い方もマスターしてくださいね。

飲み方

私がバーテンダーを始めたころは先輩方からよく、こう言われました。

「ショートカクテルは3口で飲み干せ」と。

たしかにシェーカーの中で急速に冷やして混ぜ合わせるといった技法なので、時間が経つと液体自体が分離して美味しくなくなるのはすごくわかります。

ただ、じゃあ何分掛けてもいいのかと言われてしまったら、いくら3口でも意味がありませんよね。

要するに、バーテンダーさんが精鍛込めて作った1杯なので、何口で飲んでもいいので早く飲みましょう。

もちろんハードボイルドにいきたい方はサクッといってください。

ギムレットのアレンジ

甘めなギムレット

一番わかりやすく、作りやすいのは、ガムシロップの量を多く入れて作ることです。

クラシックスタイルのコーディアルライムを使って半々のレシピでも十分甘いとおもいますよ。

いやこれでも甘さが足りない場合は、ジンの種類を変えてみましょう。

と、これはなかなか難しい技法なんですが、シェイクした液体に空気を多く含ませると口当たりもよくすごく甘く感じます。

この技法は後程ご説明させていただきますね。

アルコールが苦手な人におすすめなギムレット

ギムレットというカクテル自体がほとんどジンで出来ているカクテルなので、アルコールが苦手な人は止めておいた方がよろしいかとおもいます。

いやいや、それでも飲んでみたい味わってみたい、だって小説や映画で出てくるときにイメージしづらいから

という人には「バージン・ギムレット」なんていかがでしょうか。

バージンとはお酒が入っていないノンアルコールカクテルのことを指すのですが、今回は少しだけジンを使ったスタイルをご提案させていただきます。

通常45mlほど使用するところ5mlにしましょう。

ライムとガムシロップで塩梅を調整して100回ほどハードシェイクします。

氷が溶けて全ての材料と溶けた氷がいい感じに馴染みます。

もちろんこんなにシェイクしているので、液体の中に空気も入って、アルコールが苦手な人でも楽しめるギムレットの出来上がりです。

これならもう少しジンを入れてもいいと思う人は、自分なりのいい塩梅を見つけてオリジナルギムレットを作ってみてください。

などなど、以上は例です。

ギムレットに合う料理&おつまみ

アルコール度数が高いカクテルなので、料理と合わせるというよりもおつまみの方が適しているとおもいます。

これは私の今まで合わせてきた中での感想ですが、ジンの材料(ジュニパーベリーやコリアンダー)ライムの柑橘系の香りととてもよく合うものは、刺激が強いエスニック料理全般です。

刺激があるものを口に入れて食す。その後にギムレットで流し込む。

口の中が一気にさわやかになりますよ。

個人的にはグリーンカレーと合わせるのが好きです。
興味がある方はぜひ試してみてください。

おつまみですと、バーでもよく常備しているミックスナッツやジャーキー、それからピクルスなどの酸味があるものはだいたいよく合うとおもいます。

料理=エスニック料理(なかでもグリーンカレー)、麻婆豆腐もいけます。
おつまみ=ミックスナッツ、ジャーキー、ピクルスなどの酸味がある酢漬けも合いますね。

ギムレットの歴史(逸話)

先ほども少しお話ししました、ギムレットを語るうえで、欠かせない小説。

レイモンド・チャンドラーの代表作「長いお別れ」
重要な小道具の一つとして登場する「ギムレット」

物語の序盤、店を開けたばかりの静かなバー。

マーロウとテリー・レノックスが友情を育むシーンは、ハードボイルド小説を語る上では欠かせない重要なシーンです。

落ちぶれた生活をしているレノックスにマーロウが、レノックスの旧友であるラスベガスの大立者を頼ればよいと諭すシーンがあります。

レノックスは、「それは出来ない」と断ります。

理由は、「僕が頼めば彼は断れない。それはフェアじゃない」からと言います。

マーロウは、「彼に借りを返す機会を与えるべきだ」と反論するが、それを聞き入れないレノックス。

一見似た者同士に思える二人ですが、価値観や人生観の違いが垣間見れ、かつ、その後の二人の運命を暗示するかの名シーンです。

今、現在こいつは・あの人は俺と私と考え方が似てる、趣味も似てる、そう思ってもお互い大人になると色んな経験や体験の仕方が変わるだけで、物事の考え方や捉え方が違ってくる。

まさにそう思って、友達付き合いや恋愛が終わってしまった方も多いんじゃないでしょうか?

がこの話にはいいエピローグが待っています。

皆さんもぜひ、この「長いお別れ=ロング・グッドバイ」を読んでみてください。
もっとギムレットが好きになるとおもいます。

また、レノックスがギムレットのレシピを語るシーンも印象的です。

「本当のギムレットはジンとローズのライムジュースを半分づつ、他には何もいれないんだ」と言います。

お酒にあまりこだわりがないマーロウは軽く聞き流しますが、これを聞いていたバーテンダーが後にローズ社のライムジュースを仕入れて、マーロウに振る舞います。

ちなみに「本当のギムレットとは?」何を意味しているかご存知ですか?

少し、小説の世界から抜け出して解説していきます。

カクテルの歴史にはいろいろな諸説がありますが、今みなさんが飲んだり、作っているカクテルの多くはアメリカで生まれました。

1922年~1933年アメリカで禁酒法時代がありました。

そのとき、多くのアメリカのバーテンダーが世界中に散ったことにより、世界中(おもにヨーロッパ)に広まったという説がございます。

その中の一人。
今ではバーテンダーなら誰もが知っている、ハリー・クラドック。

アメリカからロンドンに渡った彼は、やがてサヴォイホテルのアメリカンバーのチーフバーテンダーになり、独創的なアイデアと豊富な知識で、カクテルの権威の1人として認められました。

その彼が1930年に発表した「サヴォイ・カクテルブック」
今のカクテルのレシピ本とは異なり、うんちくやイラストを多用してカクテル文化を紹介するようなことをメインとした本です。

現在でも世界中のバーテンダーやお酒が好きな愛好家に読まれているロングセラー本です。

その本には、ギムレットのレシピがこのように記載されています。

「バローのプリマスジン1/2
ローズのライムジュース1/2
ステアしてグラスへ、必要に応じて氷」

小説でテリー・レノックスが言ったセリフはここからきていたのかなと連想させられます。

イギリスのジンとローズ社のライムジュースを使用したギムレットは、ハリー・クラドックも認めた一杯だったんですね。

イギリス人にとっては矜持でもあったのかもしれません。
レノックスの台詞には、彼の失ったイギリスでの日々と愛した人への想いが込められいたのかもしれませんね。

「ギムレットには早すぎる」

ウィキペディアでは、単に飲むにはまだ時間が早いみたいな解説をしていますが、実は違うんですね。

フィリップ・マーロウはテリー・レノックスと友人になります。
レノックスはギムレットが好きで、二人は幾度となく、バーでギムレットを飲み交わします。

しかしレノックスは何者かに殺されてしまいます。
そして、マーロウはこの事件の捜査に関わります。

詳しく、内容が知りたい方はぜひ、読んでみてください。

しかし….
実はレノックスは生きていました。
整形手術で別人になりすましていました。

小説のラスト近くになると、別人になったレノックスがマーロウのもとに訪ねてきます。
もうラストですし、マーロウも真相に気づいています。

マーロウもはっきりとは言いませんが、君がレノックスだということはわかっているようなニュアンスの語りかけをします。

レノックスもあえて、僕はレノックスだとは語りませんが、いつも二人で飲んでいたギムレットを引き合いに出して、こう言います。

「ギムレットには早すぎる」

とね。

小説のネタばらしになってしまいましたが。
これが私がおもうギムレットの歴史・逸話だとおもいます。

ギムレットの注意点

まずは、ギムレットのカロリーからご説明させて頂きます。

ジンにもいろんな種類があり、加糖しているものや、フルーツを使用して作っているものもありますが、

今回はドライジンでのレシピ、現代多く作られ、飲まれているレシピを元にカロリー計算をさせていただきます。

まずは、ギムレットのレシピのおさらいからいきますね。

  • ドライジン 3/4(45ml)
  • ライム 1/4(15ml)
  • ガムシロップ(カリブ社)2tsp(10ml)

ドライジンのカロリーは、94g(100ml)で267kcalのカロリーです。
なので、45mlですと、約120kcalになります。

ライムは1/4(15ml)使用します。

1個、約84gだと想定して果汁は約35%。
果汁の重さは、約29gカロリーは8kcal。

今回使用する量は、1/4(15ml)なので、カロリーは2kcalです。

最後にガムシロップ。
今回はカリブ社のカリブ・カナデュー100%さとうきび天然糖液を使用した際のカロリー計算でおこないます。

じつは、砂糖と甘い糖の種類は色々ありまして、それによって成分も異なってきます。

少しだけ、違いをまとめてみましたので参考にしてください。

その前に、糖液のご説明をします。

糖液とは砂糖の仲間で、精製糖(混ざりものを除いた砂糖で、ショ糖が主成分です。)を液状にしたものです。

溶かす手間が省けるので、ガムシロップや清涼飲料水・冷菓・缶詰・アルコール飲料・ソースなどの調味料など、実はみなさんがよく口に入れるものでも多く使われています。

そんな糖液ですが、「ショ糖型液糖」「転化型液糖」に分けられています。

「ショ糖型液糖」は、ショ糖を液状にしたもので、上品な甘さが特徴です。
甘さの例で表すと、グラニュー糖のようなかんじです。

カロリーは100gあたり約271kcal

「転化型液糖」は、ショ糖(砂糖の主成分で、ブドウ糖と果糖が結合したもので、二糖類)を主成分とした液糖に、転化糖(ショ糖を加水分解して、ブドウ糖・果糖を混ぜた甘味料)を加えた液糖で、濃厚な甘さが特徴です。

濃厚な甘さを例で表すと、上白糖のようなかんじです。
カロリーは100gあたり約307kcal

糖液の主原料は、サトウキビやてん菜です。
カリブ社のさとうきび糖液は、添加物は一切使用していない糖液シロップです。

で、気になるカロリーはと言いますと、カリブ社の糖液シロップは、添加物も一切使用していない「ショ糖型液糖」なので、10mlですと、約21g(大さじ1)なので、約57kcalとなります。

まとめますと、

  • ドライジン  3/4(45ml) 約120kcal
  • ライム    1/4(15ml) 約 2kcal
  • 糖液シロップ 2tsp(10ml) 約57kcal

合計 約179kcal

です。
カロリーは意外とありますね。

でもそんなに何杯も飲めるカクテルではないので….

ちなみにこのカロリーを消費する運動の目安ですが、走ったり泳いだりするのは嫌だという方に、日常でも気軽に行える方法を伝授いたします。

電車での通勤の際や、出かけ先での建物にある階段。
そう階段をなるべく使用して移動してください。

きっとおいしい「ギムレット」が飲めること間違いないですから!!

1杯でだいたい25分の上り下りです。

「えええ~」とおもうかもしれませんが、これも美味しい「ギムレット」にたどり着く過程ですから!